唐津焼の陶芸家 井上浩一

唐津焼の源流と言うべき、李朝陶磁器の美しさに心ひかれて、人の心に優しくつたわるものが出来たらと思います。

陶芸用語辞典

あ行

  • 青唐津(あおからつ)・・・・・・鉄分を含んだ、生地や釉を還元焔焼成(還元焔焼成)して出来た、青みがかった唐津焼。

  • 上絵(うわえ)・・・・・・上絵付(うわえつけ)とも言う。本焼成したあとに上絵具で絵付けして、800度前後の温度で焼き付ける陶磁器の装飾技法のひとつ。特に磁器の場合はこの装飾技法は一般的である。

  • 釉(うわぐすり)・・・・・・釉薬(ゆうやく)とも言う。陶磁器の表面のガラス質の部分。特に陶器の場合は吸水性があることから、食器として使用するには釉は不可欠である。

  • 絵唐津(えからつ)・・・・・素地に鬼板で文様を描き、長石釉や木灰釉で施釉して焼成したもの。

  • 鬼板(おにいた)・・・・・・瀬戸地方で大量に産出する板状の褐鉄鉱(鉄の酸化鉱物)のこと。

か行

  • 掻落(かきおとし)・・・・・生乾きの素地の上に黒土を施し、それを掻き落して模様を作る装飾技法のひとつ。

  • 還元焔焼成(かんげんえんしょうせい)・・・・・酸素の少ない不完全燃焼の状態で焼成すること。

  • 貫入(かんにゅう)・・・・・本焼成後に生地と釉薬の収縮率の違いから、釉薬にヒビが入ること。

  • 黄唐津(きからつ)・・・・・・素地に木灰釉や灰釉で施釉し、酸化焔焼成したもの。素地の中の鉄分が枇杷色に発色することからこの名が付いた。

  • 素地(きじ)・・・・・陶磁器の成形された生地のこと。焼成されるまえの素地を生素地(なまきじ)。素焼きされた後の素地を素焼き素地(すやききじ)という。

  • 黒唐津(くろからつ)・・・・・・素地に鉄釉(黒飴釉、飴釉)や灰釉を施釉して焼成したもの。

  • 呉須(ごす)・・・・・染付に使う下絵具の一種。酸化コバルトが主成分。釉薬を掛けて本焼成すると藍色に発色する。

  • 粉引(こひき)・・・・・・李氏朝鮮から伝わった陶器のこと。名前の由来は「白く粉を吹いたような釉面」から名づけられたとも言う。粉引の素地には灰白ないしは赤土(茶色の土)が多く使われる。

さ行

  • 酸化焔焼成(さんかえんしょうせい)・・・・・酸素が十分供給できる状態で焼成する焼成方法。

  • 磁器(じき)・・・・・陶石を主原料として、白色でわずかに透光性のある焼き物。吸水性がないのが特徴。【反】・・陶器

  • 辰砂釉(しんしゃゆう)・・・・・・石灰釉に酸化銅を少量加えた釉薬。辰砂釉を掛けた焼き物を強い還元焔で焼成すると全体が真っ赤になる。紅釉、銅紅とも言う。ただし、焼成が難しく、なかなか真っ赤にならず、それゆえ辰砂の作品は貴重。

  • 素焼き(すやき)・・・・・・生地を成形して乾燥させたあと、さらに焼締めるために比較的低い温度で焼成することを言う。素焼きのあとに施釉を行い、本焼成に至る。

  • 象嵌(ぞうがん)・・・・・・押印や彫りで凹みをつくり、その中に本体と違う色の土を盛り付けて文様を作る技法。象嵌の技法は高麗青磁で完成され、その後李朝陶器に引き継がれた。

  • 染付(そめつけ)・・・・・・素焼きした素地の上に呉須で下絵を付け、その後、透明な釉薬をかけて本焼成したもの。中国では青花(せいか)と言う。

た行

  • 叩き(たたき)・・・・・・叩き成形とも言う。器の外と内から叩き木と当て木を使って、叩いて締める技法。軽くて上部な焼き物ができる。叩くため、焼き物の表面には凹凸の模様ができる。

  • たたら造り・・・・粘土を板状にした「たたら」を使い、それを切ったり、繋いだりして焼物を作る技法。

  • 陶器・・・・・・透光性がなく、吸水性がある。カオリナイト(カオリン)やモンモリナイトを多く含んだ粘土を原料とし1000度〜1300で焼いたもの。日本では唐津焼、伊賀焼、大谷焼、信楽焼などがある。粗陶器と精陶器に分けられる。

な行

  • 登り窯(のぼりがま)・・・・・斜面などの地形を利用したり、炉内を間仕切りするなどして燃焼ガスの対流を起こさせ、焼成の温度を一定に保てるように工夫した窯。種類として連房式登窯、窖窯、龍窯などがある。

は行

  • 灰釉(はいぐすり)・・・・・・樹木や藁を原料とした高火度釉薬。

  • 刷毛目(はけめ)・・・・・・刷毛で白土を塗って刷毛目を残した上に透明な釉薬を掛けた技法。

  • 粉青沙器(ふんせいさき)・・・・・鉄分の多い陶土に細かい白土釉で化粧掛けをほどこした、灰青色の陶磁器。ルーツは高麗青磁と言われる。日本ではこの技法は三島手、刷毛目に生かされている。

  • 本焼成(ほんしょうせい)・・・・・・本焼き焼成とも言われる。陶磁器は生地、素焼き、施釉を経て最終工程である本焼成で出来上がる。焼成の温度は陶器と磁器では若干異なり、陶器の場合、だいたい1100度から1300度の範囲である。

ま行

  • 斑唐津(まだらからつ)・・・・・・長石に藁灰を混ぜて焼成すると白の中に青や黒の斑が現れるのでこの名が付いている。

  • 三島(みしま)・・・・・・三島手とも言われ、押印や線彫りで描いた凹みに象嵌を施す技法。もとは朝鮮李朝の技法。

や行

  • 窯変(ようへん)・・・・・・焼くときの炎の性質や素地、釉薬の成分が影響して、思いもよらぬ釉色や釉相が現れること。

ら行

  • 李朝陶磁・・・・・李朝初期の粉青沙器は高麗青磁から派生したものと言われる。鼠色の素地に白地の象嵌、化粧掛けを施したもので、日本では三島、刷毛、粉引と呼ばれ茶陶として親しまれた。李朝陶磁は中国陶磁にない柔らかさ、優しさがあると言われている。

  • 轆轤(ろくろ)・・・・・円形の回転する台で、陶磁器の生地である粘土を成形するのに用いる。動力は以前は人力であったが現在はほとんど電気モーターによる動力を利用している。